データで見る男女の賃金格差の現状 – 問題点と解決策

雇用形態別・男女別労働時間

男女の賃金格差は、就職先の産業や企業の選択と、そこでの労働時間で決まってくる。男女の賃金格差が埋まらない要因は女性の上昇婚志向と、男性がそれに適応していることにある。賃金の男女平等を達成するためには、男性が楽な仕事で少なく稼ぎ、女性が厳しい仕事で多く稼ぐようになることが必要だ。

男女賃金格差の現状

日本における男女の賃金格差は年々縮小しているが、まだまだ大きい。直近では、男性の給与を100としたときの女性の給与は77.6にとどまる。以下のグラフは内閣府「男女共同参画白書令和4年版[1]」にある男女間の所定内給与格差の推移だ。青線は男性正社員・正職員の給与水準を100としたときの女性正社員・正職員の給与水準を表している。

男女間の給与格差の推移 2021

しかしこれは、男女が同じ仕事を同じ時間こなして同じ結果を出しているにもかかわらず女性の給与は男性の77.6%にとどまるという意味ではない。もし仮に、男女でまったく同じ仕事でまったく同じ成果が得られ、しかも女性を22.4%オフの給料で雇えるなら、男性を雇う経営者はいなくなるだろう。男女は同じ仕事をしていないし、同じ時間働いていない。

男女の産業選好の違い

建設業の従事者には男性が多く、医療福祉業の従事者には女性が多いように、産業によって就業者数の男女比は異なる。また、産業別に給与水準も異なる。その中で、男女がそれぞれがどの程度の人数がどの産業に従事しているかを、統計データから抽出してグラフ化した。その条件は以下の通りだ。なおいずれも使用したのは2020年時点のデータである。

  1. 厚生労働省の労働統計[2]から月給(総支給額)の産業別平均値を取得。ただし第一次産業は給与所得者が少ないため除外した。
  2. 国勢調査[3]から、産業別・性別の労働人口を取得。パートタイム労働者や時短労働者を省くため、労働力状態を「主に仕事」とした人数に限った。

そのグラフが以下のものだ。黄色の折れ線グラフは産業分類(大分類)ごとの給与水準を示しており、産業分類では給与水準の高いものから順に左から並べている。青と赤の棒グラフは男女の労働人口である。グラフ左側に位置する給与水準の高い産業では男性比率が高く、グラフ右側に位置する給与水準の低い産業では女性比率が高いことがわかる。

産業分類別・給与水準と性別労働人口

上のグラフは、性別だけでなく年齢や勤続年数や役職や職種などの要因をすべて無視して、同じ産業に従事する者にその産業の平均給与水準をあてはめ、男女別の人数をプロットしただけのものだ。しかしこの時点ですでに、男女間の賃金格差が表れている。それをまとめたものが以下の表だ。

平均賃金男性を100とした指数
男性38万9千円100
女性35万8千円91.9

ここまででわかるように賃金の男女格差が起きる要因の一つは就職先となる産業選好の男女の違いだ。これには当然、就職以前の進路選択の時点から影響してくる。これ自体はまったく正当なもので、女性に対する差別的な扱いによって賃金格差が生じているという誤解を否定するものだ。しかし、男女間の賃金格差の原因はこれだけではない。

男女の労働時間の違い

雇用形態を問わず、労働時間にも男女差がある。これも男女間の賃金格差に直結する。下のグラフは、総務省統計局による令和3年社会生活基本調査[4]のデータを元に、週全体から平均した一日あたりの労働時間を雇用形態別・性別にまとめたものだ。すべての雇用形態において、男性の労働時間は女性のそれを上回っている。

雇用形態別・男女別労働時間

上記グラフのデータに指数(男性の労働時間を100としたときの女性の労働時間)を加え、表にまとめたのが以下のものだ。男性の労働時間は女性に比べ、およそ10%から20%ほど多いことがわかる。あくまで労働時間だけの比較だが、正規職の場合なら、男性は17%ほど女性より多く働いている。

性別労働時間(分)指数(男性100)
正規職男性423100
女性36385.8
派遣社員男性351100
女性28280.3
契約社員男性348100
女性32192.2
嘱託男性328100
女性29188.8

同じフルタイム労働の正規雇用者でも、男性のほうが17%程度長く働いているのであれば、男女間の賃金格差もまた男性のほうが17%程度高くなる。これ自体はまったく正当なもので、女性に対する差別的な扱いによって賃金格差が生じているというのは誤解にすぎないことがわかる。

なお、個人の労働時間の長さは、その個人が積み上げる経験に直結する。経験は社内外での信頼に結びつき、昇進やヘッドハンティングにつながる。週あたりの労働時間の男女差は正規職でたった7時間だが、この経験の積み重ねは、5年10年と勤続したとき大きな違いになる。こうしたこともまた、女性に不利に働いていることは間違いないだろう。

男女賃金格差の原因

ここまで見てきたように、就職先の産業と労働時間だけでも、賃金の男女格差はかなり大きくなる。正規職に限って比較すると、就業先となる産業を選択する時点で男性全体の給与は女性全体よりも8.81%高くなり、就職すると男性全体は女性全体よりも16.55%多く働く。これを指数で見ると次のようになる。

産業選択労働時間合計
男性正規職100100100
女性正規職91.985.878.9

産業と労働時間だけを加味したここまでの計算で、男性正規職全体を100としたときの女性正規職全体の給与水準指数は78.9となった。ここで冒頭の「男女間所定内給与格差の推移」のグラフの数値を思い出してみよう。女性正規職の給与水準指数の最新値は77.6だった。産業と労働時間だけで、格差指数はほぼ近似の値となっている。

問題点と解決策

男女の賃金格差の問題点はシンプルだ。就職先の選好と労働時間だ。男性はより給与の高い産業に就職して長時間労働する傾向にある一方で、女性はより給料の低い産業に就職して労働時間が短い傾向にある。したがって解決策もまたシンプルだ。次の2点のいずれかまたは両方を実施していけば、男女の賃金格差は縮小または解消する。

  1. 男性が給与の低い産業に就職し、長時間労働しない。
  2. 女性が給与の高い産業に就職し、長時間労働する。

このシンプルな解決策である程度うまくいくことは、日本以外の先進諸国が証明している。以下のグラフは男女間の賃金格差を国際比較したもので、内閣府「男女共同参画白書 令和4年版[5]」からの引用だ。上位国には女性がよく働き、男性がそれほどでもない男女平等国が多く入っている。

男女間の賃金格差の国際比較 2020

しかし同時に、格差指数が100ポイントを超えた国、つまり男女間格差が女性優位になった国がないことにも注意が必要だ。賃金の男女格差が反転しない理由は種としての異性獲得競争にある。女性の配偶選好において男性の収入と魅力が直結している限り、男性は無理をしてでも女性より多く稼ぎ続けるだろうからだ。

  • 女性に上昇婚志向がある限り、未婚男性は無理をしてでも多く稼ぎ続ける。
  • 女性が上昇婚し続ける限り、既婚男性にかかる稼得圧力は維持され続ける。

欧米や南アジアや極東アジアで増加しているMGTOW(ミグタウ)や、または中国の寝そべり族[6]のように、異性獲得競争から降りてしまう非婚主義男性がさらに増え、男性の異性獲得競争が緩やかになれば状況は変わるかもしれないが、現状はまだまだだ。ノーマルな男性として異性獲得競争に参加するのであれば、女性にとって魅力的な収入を持つ必要がある。

男女別・年収別生涯未婚率

上のグラフは総務省発表のデータ[7]を元に、生涯未婚率を年収別・性別にまとめたものだ。男性は年収の上昇とともに未婚率が下がる。結婚市場では低収入な未婚男性は余るのだ。それだけではない。既婚男性も職を失えば家族を失う。以下は男性の完全失業率と離婚率の長期推移をグラフ化したものだが、これらに相関があることが見てとれる。

失業率と離婚率の推移の比較

まとめ

男女の賃金格差は、就職先の産業や企業の選択と、そこでの労働時間で決まってくる。女性に対して敵対的な待遇をしている結果として格差があるわけではなく、むしろ長時間にわたって過酷な仕事に従事させないようにするという慈悲的な待遇をしていること(これは慈悲的性差別にあたる)が原因になっている。筆者個人としては、この状況に反対だ。

女性に対する慈悲的性差別は、男性を過酷な労働に押し込め男性の健康や生命を損なうものだ。男性はもっと楽な仕事で少なく稼ぎ、女性は厳しい仕事で多くを稼ぐ形で男女平等を達成することを理想だと考えている。おそらく多くのフェミニストも同様だろう。私はすでに仕事を減らした。次はフェミニストの皆さんがハードワークに勤しむ番だ。

男性が主たる家事育児役割を担う家庭が増え、女性が主たる稼得役割を担う家庭が増えれば、マクロでの男女間の賃金格差は縮小する。男性の家庭進出だ。主たる稼得役割を進んで引き受け、稼ぎの悪い男性との結婚を厭わない女性が増えることを夢想しつつ、独身男性は家事育児介護の能力を高めて結婚に備えよう。それに抵抗があるなら、結婚を回避することでも男女平等に近づくだろう。